地方公務員が民間に転職しようとする時、まず、民間企業の「風土」が自分に合うのかどうか不安ですよね。
地方公務員としての年数が長いほど、その不安は大きいかと思います。「自分は果たして通用するのか」と。
でも、転職前に「どこが主に違うのか」を知っていれば、必要以上に不安になることはありません。
それぞれの民間企業によって変わるかもしれませんが、両方を経験した私が、実際の現場で感じた部分を3点お伝えします。
①スピード
私が地方公務員と民間企業の違いで最も強く感じたのは、何よりも「スピード」。
組織としての意思決定の早さ、意思決定から実行までの早さ、実行から検証までの早さ、検証からまた実行するまでの早さが違うと感じます。
要するに、PDCAをまわすスピードが圧倒的に違います。
「トライ&エラー」を、とどまらず繰り返している感覚です。
地方公務員上がりの私としては、こんなことを不安に思うこともあります。
・スピードを意識し過ぎて検証が不十分ではないか?
・全体的に仕事の精度が足りていないのではないか?
・もう少し、社内で議論を重ねるべきではないのか?
しかし、民間企業の論理としては、
「時間をかけ過ぎて、商機を失う(会社として損失になる)ことの方がリスクである。」という発想なんですね。
個人的な感覚からすると、精度は80点くらいでしょうか。
それでも、民間は80点まで達していたなら動きます。
それだけ、精度以上にスピードを優先します。
1日でも遅れると競合他社に先を越されるおそれがあるため、広告など利益に直結することは、特に優先して着手します。
報告書を作ることなど緊急性の低いものは、すべて後回し。民間では、そこを間違えると特に怒られます。
私も転職後、優先順位を間違えていることを上司から注意されました…!
地方公務員から転職した場合、このスピード感に慣れることには、少し時間がかかると思います。
しかし、このスピード感が、自分自身を高めてくれることは間違いありません。
スピードを維持するために「情報の共有」も徹底しています。
特に、エラー(失敗)情報は徹底してすぐ共有する。
他の部署や店舗で繰り返さないためですね!
②給与への意識
民間に勤めて、地方公務員ってやっぱり給与への意識は低かったな…と感じます。
地方公務員が給与のことで気にするのは、8月の人事院勧告と、それに基づく給与条例改正と、労働組合の団体交渉の行方くらいで、自分の成績や、自治体の業績なんかは、考えませんもね(笑)
給与への意識というのは、つまり「自分の成績や会社の業績を、給与と直結して考える意識」ということです。
民間では、特に賞与(ボーナス)に関する意識が切実だと感じます。
会社の中で、こんな声を聞いたりします。
「このままの売上じゃ、夏のボーナス出ないんじゃ…。ヤバくね?」
「今期は業績好調だから、冬のボーナスは期待していいらしいぞ!」
こんな会話が、社内で普通に聞こえたりします。地方公務員の世界では絶対にない会話ですよね。
要するに、
「会社の業績が悪ければボーナスも出ないし、自分の成績が悪ければ昇給のチャンスはない。」
「会社の業績が良ければボーナスも上がるし、自分の成績が良ければ昇給のチャンスがある。」
という当たり前のことが、きちんと当たり前になっています。
特に「業績が上がればボーナスも上がる」という意識が高いですね!
それが一つの大きなモチベーションになっているという感じです。
地方公務員と違って、上がるも下がるも、ある意味わかり易いです。
地方公務員って、自分がどれだけ頑張って仕事で成果を上げたとしても、実態は、人事院勧告が上がらなければ上がりませんからね。給与アップをモチベーションにするには、正直無理があります。
※「人事評価制度」を給与に反映している自治体もあると思いますが、実態は、ほぼ形骸化しているはずです。
民間は、この点ははっきり違います。
民間の、業績好調によるボーナスアップや、自分の成果を評価されての昇給は、地方公務員では味わえない達成感を感じることができますよ!
③意思決定の方法
①のスピードとも関連するのですが、当然、民間は意思決定の方法も違います。
地方公務員の世界では、広域自治体(都道府県)であれ基礎自治体(市町村)であれ、意思決定の大部分は法令と議会のルールに縛られます。
議会の議決が必要だったり、法的な手続を経る必要があったり、国への事前協議が必要だったり…。要は、意思決定の制度自体が、時間がかかる仕組みになっていますよね。
これは、役所側を暴走させないため、秩序を守るための仕組みですから、仕方ありません。
この仕組みを、否定することはできませんし、するつもりもありません。
ただ、民間に転職する場合には、この仕組みがまったく違うことを意識しなければなりません。
民間は、業務執行の「重要事項」は取締役会の決議が必要である等のルールがありますが、大部分の意思決定は、現場のリーダーによって即決で行われます。
①のスピードを確保するためです。会社の繁栄のため、スピードを優先した仕組みになっているからです。
そもそも中小企業においては「社長の一声」で即断即決が行われることもしばしばです。
地方公務員から転職した当初は、この辺りも色々と戸惑うかもしれませんね。
ただし、これはすぐに慣れると思います。
慣れると、そのスピード感がものすごく快適に感じると思います(笑)
ちなみに、地方公務員の世界よりはるかに「無駄な会議」がないですね!
(地方公務員時代、超形式的かつ非生産的な会議とか、そもそも何のために集まってるかわからない会議とか、30分で終わる内容を2時間かける会議とか、普通にありましたので…)
まとめ
地方公務員と民間企業の違いは、主にこの3つが挙げられます。
①スピード ・・・圧倒的スピードでPDCAをまわす。
(逆に、個々の仕事の精度が気になることもある。)
②給与への意識 ・・・業績と給与が連動するという意識が高い。
(良い意味で、業績を意識にするようになります。)
③意思決定 ・・・組織の意思決定までの過程が少ない。
(最初は戸惑うかも。でもここはすぐに慣れます。)
細かい点も含めれば、この3点以外にもあるとは思います。
しかし、現場で働く上で重要なことは、結局その世界に「慣れる」ことができるかどうかだけです。
民間に転職していった私の元同僚たちも、最初こそ苦労したようですが、経験を重ねるうちにその風土にも慣れ、今では最初から民間にいたような顔で、皆バリバリやっています(笑)
私自身も同じです!!
民間への転職に関して「風土」の違いを意識し過ぎる必要はありませんよ!
※一般論として「地方公務員から民間への転職は厳しい」とよく言われることについての考察は、下記のページにまとめています。こちらもご参考ください!
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