地方公務員から起業する人は、世間一般的には少数と思われるかもしれません。ただ、私の印象では、昔に比べると確実に増えていると感じます。
これは、20年以上地方の市役所で地方公務員をしていた私の周辺で関わった方々だけではなく、起業した後の世界で、意外にも「元地方公務員」が多いことを実際に知ったから思うことです。
また、例えば地方公務員の退職後から直ぐに起業ではなくても、民間でスキルを取得した上での起業や、見習いとして修業を積んだ上での起業等、様々な形があることを見てきました。
志した年齢に係わらず、起業が人生の「夢」であるならば、少々遠回りをしてでも必ず叶えるという心の強さが、起業家には必要ということなんだと思います。
一つ言えることは、思いを持って起業して世の中で活躍している人は、誰しもバイタリティーに溢れ、本当にいきいきと人生を過ごしています。
地方公務員に戻りたいと言う人は、聞いたことがありません(笑)
①Yさん(元市役所職員→個人整体院で起業)
まずは、専門スクールで修行期間を経た後に、起業した事例をご紹介します。
Yさん(元市役所職員)
現在は地方都市に個人整体院を開院・40代
※地方公務員からの転職は30代
彼は、管理者の元同僚で、とても気の優しい職員でした。
就職氷河期の最中、大学を出てからすぐに就職できず、幾つかの民間を経験した後、地元の市役所に入庁。
転職のきっかけははっきりと聞いていませんが、市役所の仕事に大分疲れていたのは確かです。なかなか自分の希望の部署に行けなかったことや、上司と折が合わないことが続いたことで、少しずつ転職を考えるようになったのだと思います。
「30代後半であらためて自分のやりたいことを探したら、整体師になって、将来は自分の店を持ちたいと思った。」と言い、専門スクールに入って働きながら資格を取る道へ進みました。
よく話をする同僚だっただけに、突然の報告に驚きましたが、そのことを話している時の、彼はとてもいい顔をしていました。市役所での仕事中には、見たことのない顔でした。
彼の場合、独身だったことも決断できた一つの理由だったかもしれませんが、それでも「起業するならもっと早く決断するべきだった。」という彼の言葉が印象的でした。
後の私に影響を与えたのは、確かです。
資格を取得して開業時期を検討している中、コロナ禍に突入してしまい、開業が遅れてしまいましたが、市役所の退職から6年経って、ようやく念願の個人整体院を開院しました。
転職を考えていた頃は、整体師か社会保険労務士の二択だったようです。彼は、総務課の人事担当や企業会計の経験が長かったため、社会保険関係は人より相当詳しかったです。
何よりも、彼の整体院のご繁栄を祈っています。
②Mさん(元市役所職員→コンサルティング会社で起業)
こちらは、私の元職場の先輩です。
Mさん(元市役所職員)
市役所退職後に、地元でコンサルティング会社を経営・50代
※地方公務員からの転職は40代
この元先輩は、役所内でもかなり優秀な職員でした。
市役所に勤め続けていれば、間違いなく役職幹部に就いていたであろう先輩ですが、40代で「自分のやりたい仕事がしたい。」と言って退職、自らの経験を活かしコンサル事業を起ち上げました。
転職のきっかけは職場の上司と折り合いが合わずに精神を壊してしまったこと。先輩が30代後半の頃でした。はたから見れば、今の言葉で言えば完全にその上司のパワハラでした。
休職期間を経て、復帰後すぐにはパート職員がするような簡単な仕事からリワークを始め、本人の相当な努力もあり、最終的に40代で課長補佐になって休職した時点の部署に戻ってきました。
そこは経済部局だったのですが、本人は通算して長くこの部局に携わっていたため地域経済に精通しており、その経験を活かし、地域経済活性化のためのコンサルを行いたいという気持ちが湧いたようです。
しかし、役所の内部にいると、どうしてもやれることの限界があると感じていたようです。かつての上司のパワハラも、先輩が役所の業務範囲を超えたと捉えられてしまったことが要因にあったそうです。
当時の上司のパワハラがなければ、先輩の起業もなかったかもしれません。そういう意味では、人生、本当にどこで何が起こるかわかりませんよね。
先輩の地元経済に対する情熱は、休職中も衰えることなく、いつか必ず職場復帰して地元のために働き、場合によっては個人事業として独立起業してやろう!という決心を、その頃にしていたとのことです。
確かに、役所にいたままだと、いつどこで全く関係のない部署に異動させられてもおかしくありませんからね…。
地方公務員の方ならわかってもらえるかもしれませんが、自分の専門性の高い分野で、その知識、経験、人脈を活かして独立起業することって、夢を感じますよね。成功パターンの一つだと思います。
なお、先輩は現在は個人事業として事業を行っていますが、近い将来には法人化を考えているようで、行政書士である私に法人設立の手続を依頼してくれることになっています。
また、退職金うちの多くは、起業準備に費やしたそうです。地方公務員から起業する場合は、退職金の一部を開業資金として見込めることも、メリットの一つですね。
もちろん、それ以外にも起業前に資金を貯金をしておくことをおすすめしますが…!
この先輩には、今後も引き続き、地元経済のために活躍を続けてほしいと思います。
③まさたか(元市役所職員→行政書士で起業)
お恥ずかしながら、私(管理者まさたか)の事例もご参考までに。
まさたか(元市役所職員)
地方公務員→行政書士(個人事業主)起業→行政書士法人役員
※地方公務員からの転職は40代
地方公務員から転職のきっかけは、大きくは下の2つ。
①行政書士と言う仕事に強い憧れを持っていた。
②地方公務員としての将来に夢が持てなかった。
地方公務員の仕事が嫌いというだったわけではなかったですが、専門分野を掘り下げて深く学びたい性分だったので、平均約3年での人事異動には、正直、やる気をそがれていました。
また、人事異動は宿命として受け入れるとしても、私の場合は希望部署への異動がほとんど叶わなかったことも、モチベーションを落とされ、転職の引き金になったと思います。
それであれば、「自分で起業して、大変な思いもするだろうけれども、やりたい好きな仕事に没頭できる人生の方が、よっぽど幸せだ!」思うようになっていきました。
「人生100年時代」というこの時代も、起業決断の後押しをしたと思います。『LIFE SHIFT』を読んで、人生を見直す必要があると感じ、再設計に時間をかけました。
(「終身雇用の時代は終わった」と言われてしばらく経ちますが、それに向けて行動できている人ってまだまだ少ないですよね。でも、行動は少しでも早い方がいいと思います…!)
行政書士と言う仕事は、行政経験者として「市民」と「行政」の両方にとって役に立てる仕事だと感じていたので、こんなに魅力的な仕事はないと思い、目指し始めました。
その思いは間違っていなかったと、実際に行政書士になった後も思っています。
国家試験を受けるかどうかはすごく悩んだ部分ですが、結果的に「特認」の道を選ばずに試験に挑戦したことは、大正解だったと思っています(→この辺りの詳細はこちら)。
まだまだ、行政書士としての実務と、法人経営という部分の両方の側面でやらなければならないことがたくさんあり、日々奮闘中です。
正直に言いますが、行政書士法人役員に就任しているものの、年間役員報酬額は、地方公務員時代の年収にはまだ追いついていません。
もちろん、最終的には地方公務員時代の年収を超えることが目標で、近い将来に必ず達成するつもりです(^^)!
私自身の事例はまだ「成功」と言えるまで完結していませんが、とにかく準備さえしっかりと行っていれば、起業で成功できる道は絶対にある!というのが、現場からの率直な感想です。
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